「令和」の典拠は「万葉集」【元号「令和」の典拠について】
![『「令和」の典拠は「万葉集」』のアイキャッチ画像](https://makelemonadejp.com/wp-content/uploads/2024/05/the-rights-of-godparents20240512.jpg)
「令」と「和」は、
文選に収録されている張衡〈ちょうこう〉の「帰田賦〈きでんふ〉」にあるから、
やっぱり元号「令和」の典拠は「平成」以前と同じく、
漢籍だ!と主張した人がいるようで、
その主張に対し、このシリーズ記事を書く構想段階では、
以下のように書こうと思っていました。
構想段階の私見
たしかに文選に「令」と「和」はありますが、
この万葉集の序文は、
他にもさまざまな漢籍のオマージュが見て取れます。
帥老〈そちのおきな〉、すなわち大伴旅人〈おおとものたびと〉や、
その周囲の人たち、
はたまた万葉集を手に取る人たちは、
この序文に文選のオマージュが含まれていることが、
読めばたちどころに理解できるほどの教養の高さを持ち合わせていたといえます。
![Lukia_74](https://makelemonadejp.com/wp-content/uploads/2020/05/Lukia_74_tohka.png)
Lukia
さらにあれこれ補足説明を加えるという野暮なことをしても
まだ足りないかもしれません。
先の記事で時系列を追ったことでわかるように、
私達の祖先は、漢字伝来から200年弱で
オマージュできるほどの知識量と高い文化力を身につけたのです。
万葉集の頃の先人がすばらしいのは言うまでもありませんが、
緻密な文献学的・実証的研究によって、
万葉集の人々と私たちをつなげてくれた契沖もまたすばらしい。
この「令和」という元号は、時空を超えて日本人を一つにする、
新時代にふさわしい元号ではないでしょうか。
と。
典拠の自由
しかし、「典拠」と「オマージュ」の2語の
そもそもの意味を確認していて、考えが変わりました。
序文に、さまざまな漢籍のオマージュがあることは事実であり、
文選もオマージュの一つであることは間違いありません。
しかし、オマージュと典拠は異なるものです。
私は、
「元号『令和』の典拠は、誰が何と言おうと万葉集であり、
文選ではない」と考えています。
何を典拠とするかは、
元号を作った人、つまり元号の名付け親の自由であり、
権利であるからです。
たしかに用いられている漢字は全く同じなのですが、
内容の詳細や表現したいことまで同一とは限りません。
また、元号を作った人が何にインスパイアされたのか、
どんな思いを込めたのかも違うはずです。
「史上初」ということに対して釈然としない人が言い出したのでしょうが、
「そもそも名付け親でない人に典拠に関してあれこれ言う権利はありませ〜ん」と言ってしまえば終わる話だったのでした。(笑)
参考文献
【元号「令和」の典拠について】シリーズの記事執筆に際し、以下の書籍を参考にいたしました。
プレミアムカラー 国語便覧
数研出版株式会社 2018年 (ISBN978-4-410-33912-7)
倫理用語集
山川出版社 2007年 (ISBN978-4-634-05213-0)
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