検定とペナルティ(その2)【高校非常勤講師奮闘記】

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前回の記事の続きです。

「検定」は安易に手を出すな!

小テストの内容の難しさや、合格基準の厳しさ、不合格時の課題の苛烈さから逃れようと
情けない行為に走る生徒が出てきたことに、愕然とするやら腹立たしいやらでしたが、

同時に、漢字検定を小テストに使おうと考えた教師側にも怒りがこみあげてきました。

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Lukia

そもそも、テキストと生徒のレベルに相当なミスマッチがあるのに、
教える側がそれに気づいていないって、どうなの?(怒) 

私が、中学生や高校生、受験生に対し、「検定」と名のつくものに安易に手を出すな!というようになったのは、
私自身の経験が元になっています。

「検定」はマニア向け

当ブログにて、

 数学検定と受験数学は別物だ。
だから受験生は手を出すなと事あるごとに書いていますが、

それは、漢字検定も同様です。

漢字検定は、 いわば「漢字マニアのための検定」ですから、
出題内容は、
学校教育とか社会に出て困らない最低限度の漢字にとどまらないのです。

検定料は級によって異なるのでしょうが、
5〜6000円 出したのに、内容が簡単だったら、たいしてやりがいはないでしょう。

検定は、時間もお金もかけて、少々難しいこと・マニアックなことを学んだ結果、
称号・賞賛を得ることに価値があるのです。

逆にいうと、
高校生は、教科書レベル・大学入試レベルの一般常識レベルの漢字が読み書きできれば、それでいいのです。

大学進学したり、就職したとき、読み書きに困らない漢字を網羅し、
他の教科についても、入試問題をチョチョイのチョイで解けるほどの学力を持っているので、
もはやすることがない。というなら、漢字検定にでも挑戦すればいいのですが、

一般常識レベルの漢字もあやしい子たちにやらせて、何の意味があるのでしょうか。

私の「漢字検定2級」受検体験記

私は、大学生のときに英語検定2級、
アラサーのころに漢字検定2級と、数学検定2級を取りました。

漢字検定2級は、ひと月ぐらいかけて勉強したように記憶しています。

漢字検定2級は、高校卒業レベルとあるので、
書けない漢字はなかったのですが、
見たことのない漢字の組み合わせ(熟語)・読み・四字熟語にでくわしました。

つまり、漢字検定で出題される 読みや熟語は特殊なものなのです。

ひと月の勉強のおかげもあって、2級は大変ではありましたが、
比較的余裕をもって合格することができました。

私の「漢字検定準1級」受検体験記

その後、気を良くした私は、漢字検定準1級にもチャレンジすることにしました。

しかし、勉強を始めてほどなく、
準1級が2級に輪をかけて特殊なものだと気づきました。

1回目のチャレンジまでに3ヶ月ぐらいは時間をかけたように思います。
準1級の勉強はすごく大変でした。覚えても覚えても、真に覚えられたような気がしないのです。
出題されるものが特殊なので、勉強時間以外の日常生活で、覚えたかどうかを確かめるタイミングもありません。

結局、2回挑戦したのですが、不合格が続き、
嫌気が差してしまいました。

当時 30代の私は、自問します。

(30数年生きてきて、出会ったこともない特殊なものを読める必要、書ける必要があるだろうか?)

意義を見失っていた私は、即答します。
「いや、ない!漢字検定専門の先生にでもなるつもりなら別だけれど。
こんな特殊なものを勉強するより、他にやることあるでしょ。」

こうして、私は漢字検定準1級を受けるのをやめたのでした。

小テストをやるなら自己有能感が培えるように

総じて、「検定」とは「時間に余裕のある人が受けるもの」と思っていていいと思います。

級にもよりますが、その検定のために毎日2〜3時間はかけるべきレベルの問題が出題されています。

こんな難しいものを毎週の小テストに出す意味があるでしょうか。

おそらく漢字検定を小テストにしようと言った先生は、
漢字検定を受けたり、実際の入試問題を解いたりしていないんだろうと思います。

小テストは、比較的簡単なもの出題して、
生徒たちに成功体験を得させたり、さらなる勉強意欲をかきたてるきっかけづくりとして活用するべきものです。

難しい小テストを毎週課されれば、ただただ 漢字や国語が嫌になるだけですし、
教師は、小テストの点数を褒められないので、生徒との人間関係が築けません。
褒めてくれず、お小言をいう先生のいうことなんて聞きたいでしょうか。
そんなわけで、授業態度や授業中の空気にも影響が出てきます。

社会に出たら、おとなになったら、褒められることは格段に減ります。
褒められないのに、褒める側に回らされ、褒めることばかりを求められます。

ということは、高校の3年間というのは、褒められ、自己有能感を高める最後の3年間でもあるのです。
若い人たちのいろいろなことを学び、吸収できる貴重な時間を無為なものにしてしまうのは、
視野を広げると、日本全体の損失につながるもったいないことなのです。

どうしても漢字検定を小テストに使いたいなら、
5級から3級あたりを周回させて、
小学校・中学校の漢字が間違いなく 読み書きできるようにし、
テストを受けた全員に、自信や有能感を抱かせることです。

社会からの要求を受けて、
大学入試が知識偏重型から、思考力・判断力・表現力を求める形式に変わりつつあります。

そして、ある会社のデータ分析により、
大学入学共通テストでは、国語は決断力、数学は柔軟性が得点を左右するかも。という報告がもたらされました。

決断力も柔軟性も、知識偏重型の授業では培えない要素です。
これからの学校教育は、これまで以上に児童や生徒に有能感と自律性をもたせることが求められるのかもしれません。

レモンのライン
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プロフィール

Author Profile
Lukia_74

元・再受験生、元塾講師、元高校非常勤講師。広島育ち。
中・高国語の教員免許を取得するも、塾講師時代は英語や数学ばかり教えていた。
思うところあって大学再受験を決意。理転し、数学Ⅲ、化学、生物を独習する。国立大学へ合格するも、2018年3月に再受験生生活にピリオドを打つ。
モットーは「自分の予定はキャンセルできても、生徒の予定はキャンセルできない」と「主婦(夫)こそ理系たれ」。
広島のお好み焼きとグレープフルーツが大好き。どっちかというと左党。楽しみはひとりカラオケ。
高校で教鞭を取った経験から、現在は「現代文」と「小論文」の指導力アップを目指し、自己研鑽中。最近は趣味として高校数学を解く。

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Posted by Lukia_74