「歌2」(千載和歌集)の文法・語意・歌意について【雛人形と変体仮名と私】

変体仮名コレクション

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それでは、前回に引き続き、それぞれの歌の

文法や意味のおさらいをしていこうと思います。

千載和歌集より

変体仮名による歌は上の図のとおりです。
「花ざかり春のやまべを見わたせば空さへにほふ心ちこそすれ」と書いてあります。

文法と意味のチェック

「見わたせば」は、ハ行四段動詞「見わたす」の已然形に助詞の「ば」がついています。
「已然形+ば」は、「〜すると」という意味になります。

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Lukia

ちなみに、「未然形+ば」だと、「〜ならば」という仮定の意味になります。

そして、頻出の副助詞「さへ」が使われています。
古語の「だに」「すら」は、「〜さえ」と訳し、
「さへ」は、「〜までも」と訳します。
(まぎらわしいので、よく整理してくださいね)

「心ちこそすれ」では、係り結びの法則が用いられています。
そっけなく訳すと、「心地がする」ですが、
「超〜そんな気持ちになる」とか、「すっげ〜そんな感じがしてくる」など、
眼前の景色から受ける感動をきっぱりはっきり味わっていることを伝えたいのだと理解してください。

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本当は、授業でもこういうかなりくだけた現代的な言葉での解釈もしたいのですが、
生徒がニュアンスだけ覚えてしまうと、定期テストの採点時に、解答とはいえないものを書いてきてしまうので、どうしても抑えた表現になってしまうんですよね。

遠目からもその形がわかるほど満開の桜が山を彩っていて、
そこから少し上に目をやると、淡い水色の空が広がっている。

己の視界の広がりを通じて、春の到来の喜びを表現しているように思います。

冬の間、縮こまり、近く、下向きだった視界や気持ちだったのが、
春になり、霞んだりするものの、身も心も伸びやかになり、
我知らず、遠くを上方を見わたしたい気持ちになっていることがわかります。

「はぁ〜、桜も空もきれいだ!春だなぁ。」なんて思い、
空に吸い込まれそうな、飛べるんじゃないかと思うような気持ちになっているのかもしれませんね。

歌意(引用)

歌意は、『新日本古典文学大系10 千載和歌集』より引用いたします。

今や花ざかりの春の山辺を見渡すと、空までも美しく見える心地がすることだ。

『新日本古典文学大系10 千載和歌集』1993年  岩波書店

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プロフィール

Author Profile
Lukia_74

元・再受験生、元塾講師、元高校非常勤講師。広島育ち。
中・高国語の教員免許を取得するも、塾講師時代は英語や数学ばかり教えていた。
思うところあって大学再受験を決意。理転し、数学Ⅲ、化学、生物を独習する。国立大学へ合格するも、2018年3月に再受験生生活にピリオドを打つ。
モットーは「自分の予定はキャンセルできても、生徒の予定はキャンセルできない」と「主婦(夫)こそ理系たれ」。
広島のお好み焼きとグレープフルーツが大好き。どっちかというと左党。楽しみはひとりカラオケ。
高校で教鞭を取った経験から、現在は「現代文」と「小論文」の指導力アップを目指し、自己研鑽中。最近は趣味として高校数学を解く。

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Posted by Lukia_74