変体仮名を判読したいなら、由来する漢字を意識する【雛人形と変体仮名と私】
いつものようにまずはわかっているところだけでネット検索をします。
すると、それぞれ歌のすべてや作者、どの和歌集からの出典なのかもわかりました。
「歌1」の出典は金葉和歌集
「歌1」は、「この春は のどかににほへ 桜ばな 枝さしかはす 松のしるしに」
金葉和歌集(きんようわかしゅう)の巻第一 春の39首めとして収められている 左兵衛督 藤原実能の作です。
「歌2」の出典は千載和歌集
「歌2」は、「花ざかり 春のやまべを 見わたせば 空さへ にほふ心ちこそすれ」
千載和歌集(せんざいわかしゅう)の春上の51首めとして収められている 後二条関白内大臣 藤原師通(もろみち)の作です。
もとの「漢字」を書き添える
判読できなかった部分がすべてわかったところで、
改めて変体仮名を調べます。
機会あるごとに、大学時代に使っていた変体仮名の解読本を使って調べてきましたが、
今回からはひと手間加えることにしました。
少し脱線すると、
変体仮名は、同じよみをする漢字をくずして仮名にしているのですが、
戦後ぐらいまでは、ひらがなも統一されておらず、いわば、「異字同音」状態でした。
同じよみなのに、書き方が複数あるというのは煩雑なので、
それぞれのよみについて、複数の変体仮名から一つを取り出し、ひらがなとして統一されました。
こうして、50種弱のひらがなしか知らない私たち戦後の世代は、
古文書や古典文学の原本を読むとき、変体仮名を学ぶ必要が生じるようになったのです。
閑話休題
変体仮名に出会うたび、変体仮名のそばにひらがなだけを書き添えてきたのですが、
今回からは、変体仮名のもとになった漢字を書き添えることにしました。
ひらがなの限界
「か」や「の」と読む変体仮名は、頻出の文字なので、
読むには読めるのですが、いつも自信がありません。
後できっちり調べるのだからいいや。と思ってきたけれど、
ある程度確信を持っておいて、「ほら、やっぱりね。」と答え合わせをするような心持ちで調べたい。
ひらがなは、音(よみ)はまかなえますが、
変体仮名の成り立ちはまかなえません。
たとえば、
現在のひらがなの「か」は、漢字の「加」をくずしたものです。
しかし、変体仮名だと、「か」とよむ文字には、漢字の「可」をくずしたものがあり、
なんなら、古文書などでは、こちらの「可」由来の「か」のほうがよく使われているのです。
また、現在のひらがなの「の」は、漢字の「乃」をくずしたものですが、
古文書などでは、漢字の「能」を書きくずした変体仮名をよく見かけます。
よみは同じなのに、由来の漢字が異なる変体仮名を読むには、
パターン学習あるのみなのですが、
3ヶ月に1回程度では十分なパターン学習になるとはいえません。
ひらがなを書いただけでは、由来の漢字を想起することができないので、
年に数回程度の変体仮名との出会いを有効活用できないわけです。
「歌1」に「漢字」を書き添える
というわけで、「歌1」の一部の変体仮名について、その文字の右側に、由来となる漢字を書き添えました。
こりゃ〜、ひらがなを書き添えただけでは、いつまで経ってもスムーズに読めるようにならないな。と思いましたね。
「歌2」に「漢字」を書き添える
「歌1」の一部の変体仮名についても、その文字の右側に、由来となる漢字を書き添えました。
ちなみに、ひらがなの「た」は漢字の「太」が由来です。
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