いきなりアンソロジー?【元号「令和」の典拠について】
出てくる本がいずれも、あまりに昔すぎるので、
整理してみました。
文選の編者、
昭明太子蕭統〈しょうめいたいし しょうとう〉は501年から531年に生きた人ですので、
文選は、531年までにはなっていたと考えられます。
そして、日本に漢字が伝来したのが、530年頃。
それまで我が国は、文字を持たなかったため、
口承文学(口伝え)が盛んでした。
文字は、記録性や情報の保持性が高まりますので、
文字が伝来したことにより、
日本人の発信する力や、発信することへの欲求は、
日に日に強くなっていったと想像します。
万葉集に、530年頃からの歌が収録されているのは、
歌を文字として記録したい、という人や、
その記録された、人々の思いを一つにまとめたい、
後世に繋ぎたいと思う人編者が現れたということでしょう。
万葉集以前にもすばらしい歌などがあったのかもしれませんが、
文字を持たなかったために、残念ながら「文学」の形跡は残っていません。
しかし、文字を持たなかったからこそ、
思わず口伝えしたくなるような、
心の叫びを素直にストレートに表現する文体や表現形式が成立していったのかもしれないと思います。
万葉集の特徴が「ますらをぶり」と表されることや、
古代日本人が「清き赤き心」を重んじたことなどから、
古代日本人はおおらかで力強い印象があるのですが、
これは、当時、文字がなかったために、
自分の思いを身も心も尽くして伝えなければならなかったから。と考えると、
心にズシンとくる表現が多いのも納得がいきます。
文選が日本に入ってきたのが710年頃と考えると、
伝来から170年ほどで、
漢字を読みこなし、使いこなすまでになり、
文選伝来から20年後の初春には、
元号「令和」のもとになった文選をはじめとする漢籍をオマージュした序文が書かれたことになります。
私たちの祖先は、
素直でおおらかな気質と、
新しいものを取り入れる旺盛な知的好奇心を有し、
最終的には固有の文化や風土になじませてしまうという高いカスタマイズ能力を持ち合わせていたんですね。
参考文献
【元号「令和」の典拠について】シリーズの記事執筆に際し、以下の書籍を参考にいたしました。
プレミアムカラー 国語便覧
数研出版株式会社 2018年 (ISBN978-4-410-33912-7)
倫理用語集
山川出版社 2007年 (ISBN978-4-634-05213-0)
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