文献学と古学派について【元号「令和」の典拠について】

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文献学と古学派についても調べてみました。

文献学 Philologie

言語で記された文献を材料として、
民族や文化を研究する学問。

日本には明治末年、
古典文学の本文校訂や成立、解釈の研究分野に導入された。
言語と密接に関連するので、言語学の意、
また、
国書の科学的調査研究というところから、
書誌学の意に用いられることもある。

文献学は、
「文献をもとに民族や文化を研究する学問」であることと、

文献に根拠を求め、そのために文献を徹底的に分析する科学研究における調査手法を取るということから、

国学には、データ分析のような要素もあったと考えられます。

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Lukia

現代なら、「国語学」という学問に含まれるかもしれません。

「文献学的」というのは、
「文献学と共通点、類似点はあるが、そのものではない」ということでしょう。

文献学自体が日本に導入されたのは明治以降とありますから、
国学における研究手法の厳密さは、
人によってばらつきがあったということなのかもしれません。

古学派について

国学隆興のきっかけとなった、
「古学派」についても調べてみました。

江戸時代に成立・発展した日本儒学の一派。

朱子学派や陽明学派に対して、
漢および宋以来の儒学者の解釈を排し、
孔子・孟子などの原典を直接読み、
その真意を汲みとろうとした。
古学派の呼称はそこに由来する。
山鹿素行の古学、
伊藤仁斎の古義学、
荻生徂徠の古文辞学は、
この派を代表するものである。

古学派は、
「原典主義」、「原点回帰主義」といえるのではないかと思います。

実は、江戸時代、
幕府御用達の学問であったのが、朱子学でした。

朱子学は、
「孔子の教えをベースにした、朱子による教え、考え」ととらえるとよいでしょう。

孔子の教えが軸になっているものの、
その解釈や教え方には、教える人の個性が含まれています。

もともと朱子学は、
江戸時代以前の日本で、仏教が隆盛だった頃、
仏教寺院の外典(サブテキスト?)のような扱いでした。

しかし、仏教の考えに疑問を抱いていた、
藤原惺窩〈ふじわらせいか〉がこれを広めていきました。

惺窩はなんと、
光圀のおじいさんにあたる徳川家康に講義をしたこともある人なのです。

惺窩は、幕府への仕官も持ちかけられましたが、
これには応じず、
代わりに弟子の林羅山〈はやしらざん〉を推挙しました。

この羅山が家康を始めとして4代の将軍に仕え、
身分秩序を正当化する「上下定分の理〈じょうげていぶんのり〉」を説いたことで、
朱子学を幕府公認の学問に押し上げました。

また、朱子学は、仏教が脱俗的であるとか、
武家社会を成立させる上で、仏教が唱える男女平等はおかしいなどと批判したので、
日本における仏教は、勢いを失ったと考えられます。

傍流であったもの、もともと日本のルーツにはなかったものが、
主流になってくることで、さまざまな不具合が生じると、
「そもそも論」が興ります。

朱子学ではこう言っているが、それは孔子も言っているのか?
このモヤモヤは原典を読めば、スッキリ解消されるのでは?

と思う人が増えていった。ということでしょう。

古学派の人々は、
解釈にブレがあるから、今の不具合が生じていることに不満を持ち、
恒久的に、誰が読んでもブレない読み方や、
教えを確立しようとしたのかもしれません。

不具合が生じてあらためて国内に目を向けたとき、
彼らはこう思ったのではないでしょうか。

日本は歴代の天皇を戴き、
独自の豊かな文化を持ち、
固有の精神風土を持っているのに、
なぜ日本人は未だ渡来した教えや文化をありがたがっているのか。と。

ジャンルを問わず、
朱子学のあおりをくった人たちに共通する不満が起爆剤になっていったと考えられます。
国学が「儒仏の教えを排した」というのがよくわかるのが、
彼らの職業というか肩書きです。

契沖は、真言宗の僧侶、
荷田春満や賀茂真淵は神職でした。

ものすごく簡単に言うと、
国学は、朱子学によって排斥され、
憂き目に遭っているお坊さんや神主さんが興し、
盛り立てていった学問であるということでしょうね。

長らく脱線しましたが、
契沖や万葉代匠記が実証的・文献学的な性質を持つとわかったので、
いよいよ「文選典拠説」の是非に入っていきましょう。

参考文献

【元号「令和」の典拠について】シリーズの記事執筆に際し、以下の書籍を参考にいたしました。

プレミアムカラー 国語便覧
数研出版株式会社 2018年 (ISBN978-4-410-33912-7)

倫理用語集
山川出版社 2007年 (ISBN978-4-634-05213-0)
レモンのライン
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プロフィール

Author Profile
Lukia_74

元・再受験生、元塾講師、元高校非常勤講師。広島育ち。
中・高国語の教員免許を取得するも、塾講師時代は英語や数学ばかり教えていた。
思うところあって大学再受験を決意。理転し、数学Ⅲ、化学、生物を独習する。国立大学へ合格するも、2018年3月に再受験生生活にピリオドを打つ。
モットーは「自分の予定はキャンセルできても、生徒の予定はキャンセルできない」と「主婦(夫)こそ理系たれ」。
広島のお好み焼きとグレープフルーツが大好き。どっちかというと左党。楽しみはひとりカラオケ。
高校で教鞭を取った経験から、現在は「現代文」と「小論文」の指導力アップを目指し、自己研鑽中。最近は趣味として高校数学を解く。

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Posted by Lukia_74