優秀作品をひたすら愛でてみる。(その1)【生き残れ!読書感想文は自己表現のサバイバルゲームだ!】

2022年9月12日読書感想文

読了時間: 約415

記事を音読してみました

2022年10月15日、記事を音読してみました。
一発録りした上、編集なしでアップロードしております。
ちょっとかんだり、読み直しをしている部分があります。(ご了承ください)

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優秀作品を「分析」してみる。

ここまで、読書感想文に求めたいことなどを書いてきましたが、
具体例がないので、説得力に乏しいなとも思っていました。
そこで、読書感想文全国コンクールにて文部科学大臣賞を受賞した作品を「分析」してみようと思います。

受賞作品がなにゆえ受賞したのか、ということを私なりに「分析」してみます。

今回取り上げるのは、第67回読書感想文全国コンクールの高等学校の部で、文部科学大臣賞を受賞した
富山県立富山中部高等学校2年 北林愛里咲さんの「世界を変えるために」です。
(以下、北林さんとお呼びすることにいたします)

北林さんは、『わたしはマララ 教育のために立ち上がり、タリバンに撃たれた少女』 /学研パブリッシング/マララ・ユスフザイ(ハードカバー)を読み、読書感想文を書いています。

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残念ながら、現在は本は販売されておらず、中古本でしか入手できないようです。

タイトルが秀逸

読書感想文のタイトルは、「(本のタイトル)を読んで」というのが一般的ですが、
そうじゃないところが、高校2年生らしさ、頭のよさを感じさせます。

そして、驚くべきは、読書感想文のタイトルからも、読書感想文からも、
彼女が読んだ本の情報がほとんどつかめないことです。

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読書感想文コンクールの公式サイトで、読んだ本の紹介がされていて初めてわかったぐらいです。

もちろん、文中にはマララ・ユスフザイの名が頻繁に出てきますので、マララに関する本を読んだことは推定できるのですが、マララに関するどの本か(彼女は有名な人なので、関連書籍は多数あるはずです)を特定することはできません。

また、北林さんが読書感想文を書くにあたり、読んだ本そのものは、あまり大きなウエイトを占めていないような印象も受けます。本の内容に縛られすぎていないというか、マララの力強い生き方に強烈な刺激を受け、それまでの迷いや悩みがいっぺんに吹き飛んでしまった、抑えきれない高揚感や前向きな気持ちを書き留めずにはいられなかったような文章なのです。

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自分の内面からあふれでるものに突き動かされて、自発的・積極的に書いている文章は、なんとも魅力的です。

タイトルは、マララのスピーチより引用したものと思われますが、
これは彼女自身の今後のスローガンでもあり、決意表明でもあります。

大人からすると、
「高校2年生にして、『世界を変え』たいと思っているのか。すごい子だな。どう変えたいんだろう」と興味を惹かれます。

まだ何者でもない、存在としてはちっぽけな17歳が、
大人でも なし得ない壮大な目標を掲げている。

このギャップ、教育に携わる大人の大好物ではないでしょうか。

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少なくとも私は、この秀逸なタイトルに食いついてしまいました。(笑)

幼い頃から意識が高かった

北林さんの文章は、等身大の自分をさらけ出すところから始まります。

彼女は、医師志望の高校2年生ですが、当時、受験勉強の意義を見いだせなくなっていました。
本当に医師になりたいのか?と自問を繰り返すけれど、明確な答えが出なかったのでしょう、
だんだんと勉強に対してやる気が出なくなっていました。

小さな頃から医師になる。という大きな目標を持ってきたけれど、
それは幼いゆえの無邪気で 身のほどしらずの目標である可能性もあります。

大人でもない、子どもでもないというマージナルな年齢の北林さんは、これまで掲げてきた目標が壮大なことに気づくものの、思うように受験勉強がはかどらず、自身の能力に懐疑的になっています。

冒頭から自分のキャラクターをどか〜ん!と提示し、読み手を一瞬にしてひきつけているのはお見事としか言いようがありません。壮大なタイトルのあとに続くのは、ちょっとヘタレな女子高生の現状紹介。
あたかも、物語の主人公のようです。

文章に引き込むためには、キャラクター設定は重要です。
ポテンシャルは高いのだけれど、まだ発揮できておらず、ちょっとポンコツだったりするほうが、
キャラクターとしては共感され、愛されやすい。

嫌な言い方をすると、17歳にして、『世界を変え』たいと考える医師志望の女子高生なんて、下手をすれば鼻についてしょうがありません。

しかし、彼女は、「やばいっ!実は相当バカでかい目標を持っちゃってた!(汗)」と
自身が世間知らずだったことを てらいなくさらけ出すことで、共感や好感を得ているのです。レモンのライン
さて、そんな理想と現実とのギャップに悩んでいるとき、マララの本に出会います。
もともと北林さんとマララとの出会いは、北林さんが10歳のとき。(6〜7年前ということになります)
当時16歳のマララが世界に向け、堂々とスピーチする姿を鮮明に覚えていたそうです。

このエピソードもサラッと書いてあるのですが、北林さんがタダモノではないことがよくわかります。
10歳といえば、小学校4年生です。こんな意識の高い小学生、そうそう見かけないのではと思います。
小さい頃から、医師になる素養や気質を備えていたことがわかります。
また、これはもはや想像の域ですが、ご両親は、小学生の彼女にこのような意識を持たせ、彼女の考えや思いを尊重しながら育んで来られたのではないかと思います。

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文化的意識の高いご家庭ではないかと推察します。

マララの強さを知りたい

10歳の北林さんにとっては、6歳年上のマララはどこか遠い存在だったかもしれませんが、
高校二年生の北林さんと、本の中のマララは同年代として身近に感じられたことでしょう。

10歳の頃の北林さんにとって、16歳のマララは勇気あるお姉さんであり、
なんなら、16歳になれば、自分もマララのように力強く生きるお姉さんになれるのではないか。と自らの将来を漠然と楽観視していたのかもしれません。

しかし、いざマララの年になってみると、全然違ったのです。
マララはただの16歳じゃなかった。(壮絶な体験・経験をしています)

しかし、ここで北林さんの芯の強さが発揮されます。
悩みも多く、まだまだ子供っぽい自分と同じ年の頃に、マララはなぜ世界に向けてメッセージを発信できたのか。
その強さはどこからくるのか。
それを知りたいし、自分の人生に活かせることがあれば本を通じて学び取りたいと考えたのです。

世界に対する影響力で考えれば、北林さんとマララでは比較することもできませんが、
北林さんの向上心・向学心は、マララのそれに引けを取りません。

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いや〜、北林さん、応援したくなっちゃう人ですね。

レモンのライン

次回につづく

3000字に届きそうなので、記事を改めたいと思います。

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プロフィール

Author Profile
Lukia_74

元・再受験生、元塾講師、元高校非常勤講師。広島育ち。
中・高国語の教員免許を取得するも、塾講師時代は英語や数学ばかり教えていた。
思うところあって大学再受験を決意。理転し、数学Ⅲ、化学、生物を独習する。国立大学へ合格するも、2018年3月に再受験生生活にピリオドを打つ。
モットーは「自分の予定はキャンセルできても、生徒の予定はキャンセルできない」と「主婦(夫)こそ理系たれ」。
広島のお好み焼きとグレープフルーツが大好き。どっちかというと左党。楽しみはひとりカラオケ。
高校で教鞭を取った経験から、現在は「現代文」と「小論文」の指導力アップを目指し、自己研鑽中。最近は趣味として高校数学を解く。

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Posted by Lukia_74