私が読みたいのはこんな読書感想文なのに、なかなか出会えないので、条件を書き出していく。(その4)
読書感想文は、夏休みの宿題の中では、結構気が重いもののひとつでしょう。
しかし、意識するポイントをおさえ、本を少しだけていねいに選んでおけば、
結構なんとかなるものだと思います。
人生において、2000字の読書感想文を書く経験は、数えるほどしかありません。
大変な作業の連続ですが、せっかく書くならいいものを書いてみませんか。
前回の記事はこちらです。
引き続き、本選びについて。
記事にしてみると、想定外の文字数になってしまったので、
新たな記事で続けることにしました。
あんまり分厚い本は避ける。
イギリスの魔法学校が舞台の本が流行った時期がありました。
そして、当然この本をもとに読書感想文を書いてくる子もいました。
しかし、出来はイマイチでした。
あんな分厚い本を読むのですから、時間は相当かかったはずです。
それを読み切ろうとした意欲も、尊敬に値します。
もちろん、おもしろい本だったことを一生懸命伝えようともしてくれました。
しかし、出来はイマイチでした。
原因はただ一つ。
本が分厚すぎるからです。
本が分厚く、文字サイズもそれなりに小さければ、それだけ物語内でのできごとやシーンは多くなります。
それなのに、書ける文字数は最高でも2000字。
はっきり言って、2000字程度の読書感想文を書くには「割に合わない本」なのです。
あんなに分厚いのに、こどもを飽きさせず、ぐいぐいひきこんでしまうのですから、
おもしろく印象的なシーンの連続なのでしょう。
逆に、そういうおもしろく印象的なシーンが連続するため、こどもたちはひとつに絞り込むことができません。
結果、あのシーンはどうだった、このシーンではこう感じた。
このシーンは、自分ならこうする。などと、「浅い感想」の羅列となってしまうのです。
分厚い本を読むのは結構。
おおいに読んでください。
しかし、読書感想文のために読むのは全くオススメできません。
探偵もの、推理小説も読書感想文には向かない。
冒険ものは、主人公を含め、登場人物が、さまざまな困難を通じて成長していくので、
読書感想文には向いていると思うのですが、
探偵ものや、推理小説は向いていないなぁと思います。
というのも、犯人は、得体のしれない存在であり、
かなり最後のほうまで登場してこないからです。
たとえ登場したとしても、主人公の探偵と感情が絡み合うことはないですよね。
また、探偵のキャラクターは、どれも冷静沈着なパターンが多いので、
感情の起伏がありません。
また、事件を解決に導いたのは、それまでに培った技術や知識を用いたからなのですから、
大きな「成長」も期待できないでしょう。
となると、探偵ものや推理小説は、物語の形態をとってはいますが、
その実、クイズ本や謎とき本と同じような内容なので、
「読書感想文」を書くのは至難の業かもしれません。
教科書サイズの本ぐらいがちょうどいい。
さて、あれこれと書いてきましたが、ぱっと見、読書感想文のために読む本かどうかが見分けられたらいいですよね。
A5サイズぐらいで、厚みが2~3センチぐらい、
文字の大きさも、教科書と同じぐらいか、少し小さいぐらいの本がよいでしょう。
ハードカバーの単行本をイメージしてもらうとよいと思います。
2時間以内、長くても3時間で読み切れるぐらいがちょうどよいでしょう。
[mathjax]
$$\begin{align}\\\\ &具体的には、1分間に500字読めると想定して、\\\\ &500\times 60\times 2=60,000 (字)\\\\ &長くても、90,000 字 \end{align}$$
本を手に取って、一ページあたりの文字数を計算し、単純にページ数をかければ、おおよその文字数が算出できます。
そして、そのおおよその文字数を3万字で割れば、何時間で読めるかが想定できます。
本の裏表紙の導入文や解説文を読んでみる。
本によっては、裏表紙に、物語のはじめからクライマックス直前ぐらいまでがうまくまとめられた導入文がついていることがあります。
その文章は、その作者の担当編集者が書いていることが多いので、簡潔ながら作品にも作者にも愛情がこもった導入文が書かれていることが多いです。
一番最初の読者のオススメが、自分にピンとくるかどうかで選んでみるのもよいと思います。
物語の巻末には、解説文がついていることもあります。これも言ってみれば、ひとつの読書感想文なので、
どのような内容なのかを把握するのにはよい手がかりになると思います。
課題図書の「周辺」の本を選んでみる。
課題図書は、対象年齢がしっかり考えられているので、本選びの段階で失敗することはないのですが、
できあがってくる読書感想文の内容が似たり寄ったりになってしまうので、いまひとつおもしろみには欠けます。
もし、課題図書があるが、ちょっと読んでも読書感想文が書ける気がしない場合や、
指定されてはいるが、無理に選ばなくてもよい場合は、
本屋さんや図書館で、その課題図書が置かれているコーナー周辺や、作者のコーナー周辺を見てみるのもよいと思います。
作者がほかにも作品を書いている場合、その対象年齢も大きく違わないでしょうし、
もし、大きく違っている場合は、表紙の印象や、本の文字の大きさや量などから違和感をおぼえると思いますので、
ぱっと見が、課題図書とそれほど変わらないものであれば、その本でも読書感想文を書ける可能性があります。
また、図書館も本屋さんも、細かいルールにのっとって、ジャンル分けしたコーナーづくりをしています。
ですから、作者のコーナーだけでなく、もう少し視界を広げると、ほかの作者が書いた「〇歳むけ」の本や、「☆☆に興味がある人むけ」の本が見つかります。
課題図書の作者と同様、ほかの作者が対象を想定した本ですから、そこから選べば、よい読書感想文が書ける可能性が十分にあります。
少し時間をかけて、相性の合う作家や本を見つけるのも、本選びの醍醐味といえますね。
まとめてみると。
想定外で、本選びについて2記事も書いてしまいましたが、
かつて国語教師だった私が読みたい読書感想文が書けそうな本はおよそ次のようなものです。
- 「深い感想」が持てる本
- 「すぐには役に立たない」本
- 対象年齢が実年齢以上(+2~3歳ぐらい)の本
- 6万字程度の本
- 「感情」をもった登場人物が「行動」する物語
- 登場人物が「大きく成長する」物語
- 冒険物語
- 導入文や解説文が引き込まれる本
- 課題図書の「周辺」の本
なお、人生を「冒険」とたとえれば、「伝記」などもよいですね。
次回からは、読書感想文の内容についてふれていきたいと思います。
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