私が読みたいのはこんな読書感想文なのに、なかなか出会えないので、条件を書き出していく。(その3)
読書感想文は、夏休みの宿題の中では、結構気が重いもののひとつでしょう。
しかし、意識するポイントをおさえ、本を少しだけていねいに選んでおけば、
結構なんとかなるものだと思います。
人生において、2000字の読書感想文を書く経験は、数えるほどしかありません。
大変な作業の連続ですが、せっかく書くならいいものを書いてみませんか。
前回の記事はこちらです。
私が読みたいのは、こんな読書感想文なのに、なかなか出会えないので、条件を書き出していく。(その2)
本選びが重要だ。
読書感想文に求められていることは、
「一つのことに着目し、自分の中で考えを深めたり、広げたり、こねくり回した経緯を書き記す」ことだと思います。
ここでは、シンプルに、「ひとつのことをこねくり回す」と言い換えてしまいますね。
「こねくり回す」というと、陶芸の粘土とか、パンの生地などが思い浮かびますが、
私は食いしん坊なので、パン生地にたとえてみます。
自分の考えや感じたことが「パン生地」だとすると、
パン生地をこねくり回すには、しっかりした「台」が必要となります。
パン生地をしっかり練りこむには、全体重をあずけられるようなしっかりした土台がなければいけません。
生地を叩きつけたりしても、揺らがず、生地を細長く伸ばしても十分余裕があり、生地を切り分ける刃物を押し当てても傷がつきにくい。
こういう土台がなければ、よいパンはできないのです。
ひ弱な台でパン生地を練っても、(台の脚がぽっきり折れたらどうしよう)なんて気が散って、
うまく練りこめません。台に十分なスペースがなければ、きれいに伸ばすこともできません。
刃物を使うと台のかけらがついてくるようでは、安心してパンを食べられません。
台のひ弱さを案じながら作ったパン生地では、オーブンの熱に耐えられなかったり、うまく膨らまなかったりして、パン生地自体を無駄にしてしまうことになります。当然労力もね。
2000字も書かなければならない。と思えば、
ついつい「読書感想文を書くこと」そのものに意識が集中してしまうのもわかります。
その他の課題のことも気になるでしょうし、本選びは結構おざなりにしてしまいがちですよね。
とりあえず、それなりに厚みのある本ならば読書感想文が書けるのではないか。と考え、
パラパラめくって、読みやすそうだ。と思っただけで選んでしまうと、
案外書くのに困ることがあります。
たいてい、読書感想文は、夏休みの終わりごろに一気にやってしまうパターンが多いと思いますが、
ぱぱっと本を選んでしまった結果、数時間かけて読んでも、なんの感想も抱けない。
かといって、いまさら本を選び直し、本を読んで、2000字を書く時間もない。という、最悪の状態に陥ってしまうかもしれません。
単純に「感想文」だったら、夏休みの間に体験したことを通じて、感じたこと、考えたことを書けばよいですね。
しかし、厳密には「読書感想文」なので、自分の考えをこねくり回すための「読書」が必要なのです。
ということは、最終的に「読書感想文」を楽に書くためには、
少していねいに、じっくりと一冊を選ぶか、
複数選んでおいて、早くから読み進め、最終的に一冊についての読書感想文を書くか。が必要となります。
まぁ、複数選んでおいてから、一冊に。というのは、現実的ではありませんよね。
長いようで短いのが夏休みですし、ほかにも課題があるでしょうから。
ということは、やっぱり「少し時間をかけてじっくりと一冊選ぶ」ほうがよさそうです。
「読書感想文」に向きそうな本は?
楽に「読書感想文」を書きたいなら、少し時間をかけてじっくりと一冊選ぶ。ということが大切だ。ということはおわかりいただけたと思います。
次に、どんな基準で本を選ぶか。ということが問題になりそうですよね。
ズバリ、「深い感想」が持てる本です。
「浅い感想」では2000字に耐えられません。
「役に立つ」本では、読書感想文は書けない。
「浅い感想」なら、ほとんどの本で持てるでしょう。
たとえば、ファッション雑誌とか。クイズの本とか。動物の図鑑とか。
料理のレシピ本や、工作の本、キャンプの本など、何かのやり方を詳しく書いてある本でも、それなりに「感想」は持てます。
しかし、どこまで深められますか?
「このモデルのこのファッションがかわいかった。」
「こんな答えでいいのか~とちょっとくやしくなった。」
「象は大きいと思った。」
「こんな方法があるのかと驚いた。」
「なんで?」と聞かれても、
「いや、なんでも。」ぐらいしか答えようがないですよね。
まぁ、自分と比べてどうのこうの。といえるかもしれませんが、
それでも2000字を書ききれるような深みはないでしょう。
これらは、即時性や実用性、つまり、「(すぐに、その場で)役に立つ」ことを重要視したものなので、
あれこれ深く考えたり、余韻にひたったりするような要素はないのです。
つまり、「役に立つ」本では、読書感想文は書けない。といっていいでしょうね。
逆に言うと、読書感想文が書ける本は、「すぐには役に立たない」本ということもできます。
「感情」をもつものが「行動」する本であること。
「感想文」は、「感じた」ことや、「想った(思った→思考した)」ことを書いた文章ですから、
土台となる本にも、「感じたり、あれこれ考えたりする」ものが登場する必要があります。
登場人物としてすぐに思い浮かぶのは、人間ですが、
本によっては、擬人化された生き物や、物(ロボットなど)が登場するものもありますよね。
現実には、いきものやロボットが感情を持っているとはされていませんが、
その本の中では、感情を持ち、その感情を理由にして行動するような設定がしてあるならば、
彼らを「登場人物」とし、彼らと「感情」をシンクロさせていけばよいのです。
国語の小説の問題で、「言動の理由」を問われる問題がありますが、
これは、行動には、感情や考えなどの理由があることを再認識させるための問題なんですね。
人間の行動には、感情や考えというトリガー(引き金)があります。
まれに、何も考えずにポンと行動してしまうこともあるでしょうが、
自分の目の前にある状況をどう感じ、どう判断するのかが、次の行動につながっていくことがほとんどです。
歴史なども、そうやって「感情」で読み込むとおもしろいかもしれませんね。
ここで、もう一度、「役に立つ」本のことを思い出してみてください。
「感情」を理由とした「行動」が描かれていますか?
これらの本と対するとき、「感情」が動いているのは、「読者」の側だけなので、
「感情をシンクロ」させようにも、できないことがわかりますね。
対象年齢が書いてあればチェックしよう。
小学生や、幼児むけの本には、「対象年齢」が書いてあると思います。
生まれてから十数年は、体の発達はもちろんのこと、精神面の発達も著しいので、
発達段階に応じた内容が書き分けられています。
成長するにつれ、具体的な思考のみから、抽象的な思考もできるようになり、
行間を読む。といったような複雑な感情を読み取ることもできるようになります。
まぁ、本人の実年齢と、本の対象年齢がぴったり合っていれば、
選ぶ本としては問題ないと思いますが、
少し難しいことにチャレンジするならば、実年齢+2~3歳ぐらいの本でもよいと思います。
しかし、本の対象年齢が、本人の実年齢未満の場合は、
ブレーキがかかる(読書感想文を書けない)おそれがあると思います。
小4の甥っ子が、読書感想文を書かねばならないから。ということで、
おばあちゃんちにあった童話を読んでいました。
その本は、小学生に人気のある「名作」なのですが、
よく見てみると、対象年齢が小学校1年生とされていました。
夜の暇に任せて、夫とふたり読んでみたのですが、
大人になった私たちには、ツッコミどころ満載のハチャメチャな本でした。
唐突な展開や設定で、大人からすると、ボコボコ穴が開いているようなストーリーなのでした。
「おもしろい本だったよねぇ。」とあいまいな記憶のままとどめておくべきじゃった。
と後悔しました。(笑)
後悔の念と同時に
「小学校1年生用の本で、小4の彼は、感想文を書き上げられるのか。」と心配になりました。
(このへんは国語教師っぽいですね。)
物語の世界は、日常生活ではありえない設定のこともよくあります。
そういう世界に飛び込み、登場人物たちの感情とシンクロしたり、疑似体験をすることで、
精神的に成長することができます。
たくさん本を読めば、それだけほかの人の人生を追体験・疑似体験することができ、
自分の内面を豊かにすることができます。
精神的な発達は、少し複雑なものに触れることで促されます。
読書感想文を書かなければならないから。ということで、本を読むとしても、
やはりせっかくなら、何かひとつでも考えたり、感じたりする経験が残せる本を選んでほしいと思います。
というわけで、対象年齢が実年齢+2~3歳ぐらいのものを選ぶのをお勧めします。
本選びについては、まだまだ続きます。
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