文語の上二段(落つ)【お嬢さんたち、それは上一段活用じゃない!】
「動詞の活用」は古典読解の基礎中の基礎
大学受験で、古典(古文・漢文)は使えるほうが有利です。
私は、古典(古文・漢文)は理系にこそ向いていると思っているぐらいです。
そして、古典(古文・漢文)を武器にしたいなら、まずは動詞の活用を徹底的にマスターすることです。
動詞の活用は、古典読解の基礎中の基礎だからです。
以下の図は、2022年6月現在の私が考える古文のプランブロックです。
古典は、主に約1200年前の日本語を扱っています。
言語体系が全く違う英語ほどの苦労はありませんが、
長い年月を経るうちに生じた現代日本語との文法や単語の違いを埋めていく必要があります。
古典読解には、文法的知識と単語の知識が必要となりますが、
文法に関しては、「動詞の活用」を習得しておくことが不可欠です。
というのも、助動詞の活用は、この動詞の活用を応用すればよいからです。
逆に「動詞の活用」ができていないと、
いつまで経っても、古典が合格可能性を高める武器にはならないということです。
文法は、規則性・法則性がありますから、理系にはもってこいだと思います。
短期集中でマスターしてしまえば、かなりコスパがいいのが古典分野です。
実際は、なかなかそうもいかないんですよね。
この【お嬢さんたち、それは上一段活用じゃない!】シリーズでは、
口語文法(現代日本語)の五段活用、上一段活用と
文語文法(古代日本語)の四段活用、上一段活用、上二段活用に限定して活用を展開し、
口語と文語での違いなどをみていきます。
文語に「落ちる」はない?!
口語文法において、「落ちる」は上一段活用動詞でした。
しかし、文語の動詞に「落ちる」はないんですね。
口語動詞の終止形から、文語動詞の終止形に変換する手順を覚えましょう。
「落ちる」から「落つ」へ変換
あ
1. | o-ti-ru | 「おちる」をローマ字に変換します。 |
2. | o-t (i-r) u | i-r を省きます。 |
3. | o-tu | できあがりです。「落つ(おつ)」となります。 |
活用してみる
それでは、「落つ」に「ズ・テ・。・トキ・バ・!」をつけて活用してみましょう。
落ち・ズ
落ち・テ
落つ・。
落つる・トキ
落つれ・バ
落ちよ・!
活用をしても、「落(お)」の部分は変わっていませんね。
ですから、「落(お)」が語幹となります。
語幹を省いて活用を書き出してみると、「ち・ち・つ・つる・つれ・ちよ」となっていますね。
タ行のイ段である「ち」とウ段である「つ」の2つが使われていることがわかります。
ウ段を中心として、ウ段とその上のイ段の二段が用いられていることから、
「上二段活用」と呼ばれるようになったと解釈してください。
まとめると、「落つ」はタ行上二段活用の動詞であるといえます。
活用形を見極めてみよう
峰より落つるみなの川
「落つ」を含んだ歌は、百人一首では一首しかありません。
「落つる-みなの川」は、「落つる」と「みなの川」に分けることができます。
そして、「落つる」は終止形ではありませんでしたね。
「落つ」が終止形です。タ行上二段活用動詞「落つ」が活用された形とわかります。
上二段活用の「ち・ち・つ・つる・つれ・ちよ」と呪文のように唱えてもいいのですが、
「みなの川」が名詞(体言)なのがわかりますか?
下に体言がくっついているので、「落つる」は連体形とわかります。
下に体言があるから連体形!とか、上に○○があるから☆☆だ!などのように、上下のつながりを見て判断する練習も徐々に行うようにしましょう。
『北斗の拳』ラオウ昇天シーンより
『北斗の拳』は、1980年代に大ヒットした漫画です。
一子相伝の「北斗神拳」継承者の座をめぐり、
長兄ラオウ・次兄トキ・末弟の主人公ケンシロウが争います。
(あと実はユリアという女性をめぐる壮大な兄弟喧嘩ともいえます)
最終的に長兄ラオウとケンシロウの闘いとなるのですが、
ラオウはケンシロウに敗れ、自ら昇天します。
そのシーンのかっこよさが半端なく、未だ根強いファンも多い作品です。
「わが生涯に一片の悔いなし!どぅぉりゃぁぁあああああ〜〜〜!」
内海賢二さんの迫真の名演はしびれますね。
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ラオウはヒールなんですが、ケンシロウよりも人気があるんじゃないかな。
さて、そのラオウ昇天に際し、海のリハクが言った言葉が、
「巨星、墜つ(おつ)。」です。
漢字が違いますが、「墜落」ということばがあるように、「おちる」という意味を表すので、
ここでは、「落つ」と同じものとして考えてみます。
北斗の拳の作者やアニメの脚本家さんが、文語の言い回しが好きで作ったのかな?と思っていましたが、
どうやら、偉大な人物の死を惜しむ際にいわれる表現なんだそうです。
「墜つ」は「落つ」と同じですから、タ行上二段活用です。
そして、「ズ・テ・。・トキ・バ・!」の「。(マル)」がありますね。
ゆえに、この「墜つ」の活用形は終止形とわかります。
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