恋人に会えそうな兆しを詠む。

2018年7月9日古典文法

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蜘蛛自体は苦手なのですが。

この歌は、ロマンチックで大好きです。
今回も一部だけ品詞分解をしてみようと思います。

歌や作者について

この記事を書くため、久々にネット検索をかけてみると、この歌に関する記事がたくさん出てきました。
どうやら、有名な歌らしいですね。
みなさん、それぞれに知識が豊富なんだなぁ。と、感心させられました。

以下は、その記事を読んで簡単にまとめたものです。
詳しい内容は、元記事のリンクから参照してください。

出典は『古今和歌集』

古今和歌集こきんわかしゅう』は、我が国初の勅撰ちょくせん和歌集です。
「勅」の字は、「天皇の御命令による」という意味があります。
古今和歌集は、醍醐だいご天皇の命により、当時の代表的歌人、紀友則きのとものり紀貫之きのつらゆき凡河内躬恒おおしこうちのみつね壬生忠岑みぶのただみねの四人が撰者となり、作られました。

勅撰和歌集を覚えるゴロ

高校時代に習った勅撰和歌集(八代集はちだいしゅう)を覚えるゴロをいまだに覚えています。

勅撰集は平安時代から室町時代にかけて21種類作られています。
そのうち、古今和歌集から新古今和歌集までを「八代集」と呼びます。

上のゴロに赤字で書いてあるのが、それぞれの和歌集の名前です。
スペースや見た目の関係で、ルビを打てなかったので、以下にそれを示しておきたいと思います。

  1. 古今和歌集(こきんわかしゅう)
  2. 後撰和歌集(ごせんわかしゅう)
  3. 拾遺和歌集(しゅういわかしゅう)
  4. 後拾遺和歌集(ごしゅういわかしゅう)
  5. 金葉和歌集(きんようわかしゅう)
  6. 詞花和歌集(しかわかしゅう)
  7. 千載和歌集(せんざいわかしゅう)
  8. 新古今和歌集(しんこきんわかしゅう)

作者について。

作者は、衣通姫そとおりひめです。
変わった名前なのですが、この由来がすごい。
文字通り、何かが衣を通る姫なのですが、その何かとは。

実は、「美しさ」なのです。

衣を通り抜けるほどの美のオーラを持ち合わせているなんて、どんだけ美しいんだ。
美容家IKKOさんが人差し指を振りまくることでしょう。(笑)

美しいゆえの名前であるということは知っていたのですが、
それ以上のことは知りませんでした。
衣通姫は、その美しさゆえ、不幸にもみまわれたのです。

そもそも同性との関係というのは、難しいものですが、
殊、きょうだいとなると、さらに複雑さを増します。

彼女は、第19代允恭いんぎょう天皇の寵妃、または皇女といわれています。
天皇は美しい彼女を愛しました。そしてとうとう、衣通姫は、天皇の正妻であり、自身の実の姉でもある皇后に嫉妬されてしまうのです。

そりゃ~、お姉ちゃんはおもしろくないでしょう。
「私が皇后なのに!」
「あの子は妹なのに!」
身分としても、遺伝子レベルでも、お姉ちゃんは天皇の寵愛を受けてしかるべきなのに、
天皇は、妹ばっかり愛しているのです。

そこで、允恭天皇も策をお立てになりました。
衣通姫を皇居とは別の場所に住まわせて、皇后からお隠しになったのです。

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Lukia

それで、「我が背子が来べき宵なり」なのか~。

天皇が皇居から別の場所にいらっしゃることは、そうたやすくはない。
また、ひんぱんに訪れることもかなわないでしょう。

当時の恋愛は、夜になって、男性が女性のもとをたずねていき、夜が明ける前に帰っていく。というのがルールであったということは知っていたので、
「今晩は彼が来てくれるんだわ。」と心待ちにしている歌だとは思っていましたが、
このような背景があったとすると、衣通姫が天皇を待つ気持ちは、かなり切実なものだったでしょう。

衣通姫について、さらに詳しく知りたい方はは、以下の記事を御参照アレ♪
古今和歌集「わが背子が来べき宵なり」

歌の意味

歌の意味は、およそ次のとおりです。
今宵は、私のいとしい人が訪ねてきてくれそうだ。だって、蜘蛛が活発に糸をかけているんですもの。

「ささがに(の)」について。

旺文社古語辞典によると、

ささがに【細蟹】(名)蜘蛛くもの異称。小さなかにに似ていることからいう。また、蜘蛛の糸。蜘蛛の巣。「浅茅あさぢが露にかかる――」〈源・賢木さかき
ささがにの【細蟹の】⦅枕詞⦆「くも」「いと」「い」、またそれらと同音ではじまる語にかかる。(以下略)
ささがねの⦅枕詞⦆「蜘蛛」にかかる。(中略)参考 「ささがねの」は「小竹ささが根の」と解して枕詞ととらない説もあります。

とありました。

ちなみに、「ささがに」が、「笹が根(ささがね)」から転じた語であることは、下記の記事にも書いてあります。

古語辞典によると、蜘蛛が小さな蟹に似ていることから、「細蟹」となったとありますが、
上記の「浮寝帖」の記事によると、「笹が根(ささがネ)」が、音が似ている「細蟹(ささがニ)」と間違われ、以後蜘蛛を指す言葉として定着したと考えられているといいます。

さっすが、古語辞典。

今回、あらためて古語辞典でも調べてみたら、「ささがねの」についても記載がありました。
もともと、この歌は、『日本書紀』の『允恭紀いんぎょうき』に載っていました。

古今和歌集に載っている歌と比べると、違いがあります。

つまり、「ささがねの」とあれば、上代の頃に衣通姫が詠んだ歌で、
「ささがにの」とあれば、平安時代以降に詠みなおされた歌とわかります。

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ま、ここらへんの違いは、この歌に思い入れのない人には、
結構どうでもいいことなんでしょうけどね。

「来べき宵なり」を品詞分解。


「来べき宵なり」は、上の画像にもあるとおり、「来」「べき」「宵」「なり」と四つに分けられます。
上下の関係を見ながら、品詞分解していきましょう。

「来」

「来」は、現代語なら「来る」です。
これはカ行変格活用という特別な活用です。
古語でも、同じく「カ行変格活用」であることは間違いないのですが、
さて、この活用形はなんでしょうか。また、なんと読めばよいのでしょうか。

それを考えるには、直下にある「べき」が何形に接続するのかがわかればよいことになります。
「べき」は、助動詞「べし」が活用された形であり、「べし」は終止形接続(が上に)の助動詞です。

ゆえに、「来」は終止形です。
カ行変格活用の活用を示すと以下のようになります。

終止形は、「く」と読みます。
ゆえに、「来べき」は、「くべき」と読むことがわかります。

「べき」(宵)

「べき」は、助動詞「べし」が活用された形です。
今回は、活用形が何かだけを考えてみましょう。

そのためには、直下の「宵」との関係を考える必要があります。

「宵」は名詞、すなわち体言です。
下に(連)体言がくることから、「べき」は、「連体形」です。

(宵)「なり」(。)

では、最後の「なり」について考えてみましょう。

「なり」の識別は、古典文法でも頻出の問題です。
詳しいことは、別の記事であらためるとして、今回は、直下と直上の関係から絞り込んでいきましょう。

まず、歌の意訳を参考にすると、この歌は、「我が背子が来べき宵なり」と「ささがにの蜘蛛のふるまひかねてしるしも」と二つに分ける(区切る)ことができます。
つまり、無理やりですが、「来べき宵なり。」と句点(。)をつけることができるのです。

句点(。)をつけられるということは、「なり」が「終止形」であることがわかります。
ここで、動詞の「なる」の活用形の可能性は消えます。

また、直上の「宵」との関係をみていくと、
上に名詞、すなわち体言があるので、連体形(または体言)接続の助動詞とわかります。

助動詞「なり」には、伝聞推定を表す「なり」と断定を表す「なり」があります。
それでは、この「なり」はどちらの「なり」なのか。

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Lukia

なりなり言って、コロ助みたいナリ~♪

伝聞推定の「なり」は、終止形接続であり、連体形(または体言)には接続しません。
ゆえに、この「なり」は、断定(~だ・~である)の意味を表す「なり」だとわかります。

まとめ

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Lukia

この品詞分解シリーズ、なかなか時間をくいます。
もっと速く仕上げられるようになるといいのですが・・・


 

プロフィール

Author Profile
Lukia_74

元・再受験生、元塾講師、元高校非常勤講師。広島育ち。
中・高国語の教員免許を取得するも、塾講師時代は英語や数学ばかり教えていた。
思うところあって大学再受験を決意。理転し、数学Ⅲ、化学、生物を独習する。国立大学へ合格するも、2018年3月に再受験生生活にピリオドを打つ。
モットーは「自分の予定はキャンセルできても、生徒の予定はキャンセルできない」と「主婦(夫)こそ理系たれ」。
広島のお好み焼きとグレープフルーツが大好き。どっちかというと左党。楽しみはひとりカラオケ。
高校で教鞭を取った経験から、現在は「現代文」と「小論文」の指導力アップを目指し、自己研鑽中。最近は趣味として高校数学を解く。

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Posted by Lukia_74