本の選び方、教えます。(その2)【生き残れ!読書感想文は自己表現のサバイバルゲームだ!】

2022年8月21日読書感想文

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記事を音読してみました

2022年10月15日、記事を音読してみました。
一発録りした上、編集なしでアップロードしております。
ちょっとかんだり、読み直しをしている部分があります。(ご了承ください)

再生速度は、三点メニューより変更できます。

思いのほか、文字数が多くなりましたので、(その2)に改めました。 今回は、もう少し具体的な選び方について書いてみようと思います。

現代作家の児童文学がいいかも。

読書感想文自体は、何十年も課題として出されてきていますから、
その課題図書にも、古くからおすすめされているものがあります。
たとえば、黒柳徹子さんの「窓際のトットちゃん」。
これは、私が子供の頃も、読書感想文を書くのに読む本としてすでに有名でした。

こういう名作を読むのもいいのですが、
現在、児童文学作家として活躍している人の作品を読むのもおすすめできると思います。

なぜならば、その作家が今の子供たちと同じ時代を生きているからです。
現代の児童文学作家さんたちは、大人だけど、子供の目線も忘れないから作品が書けるすごい人たちなのです。
また、現代の子供にとって身近なテーマを扱っていることが多いので、教師や保護者などの大人の助けを借りずとも読み通しやすく、自力で読み通せた。という体験は自信にもつながります。

こういう児童文学作家さんたちは、子どもたちにいっぱい読んでほしい、いっぱい考えてほしいと思いながら作品を書いていますので、「もしかして、これって、私のこと?」と思うような内容が多いと思います。
その結果、登場人物と自分とを「対比」しやすく、結果読書感想文も書きやすくなるのではないかと思います。

本を読み、読書感想文を書いた後で、もしかしたら自分にも登場人物と同じようなピンチがせまってくるかもしれません。誰でもピンチにでくわせば、あわてるものですが、
本を読んでいたことで、自分なりに落ち着いて対処できる可能性だってあるのです。

現代の児童文学は、「自分ならどうする?」というのを考えるのにちょうどいいのではないかと思います。

伝記や物語がオススメ。

「対比」して、「自己PR」するのが、読書感想文の主目的ですので、
なるべく自分と比べたくなる登場人物が出てくる本を選んでください。

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Lukia

たとえば、「○○のやり方」の本とか、推理小説などは、知識をたくわえるとか、読んで楽しむにはいいのですが、読書感想文には向いていないと思います。

偉人の生涯を書いた伝記や、冒険や成長を描いた物語は読書感想文にオススメです。
たとえば、伝記は、すごいと言われる人が、子供の頃どう過ごしたのか、どんなことがきっかけで、人生をかけてやりとげたいことに出会ったのか、努力したのかなどが書かれています。
ただし、その偉人の職業を重要視する必要はありません。

たとえば、ナイチンゲールの伝記を読んだからといって、看護師になろうと思う必要はないし、
将来看護師になりたい人だけがナイチンゲールの伝記を読むといいわけではありません。
どんな仕事をしていたか。というよりも、他の人にとってはなんでもないことが、その人にとっては大きく人生を変えるきっかけになること。
偉人と呼ばれ、伝記になるほどの理由がその人のどんなところにあるのかを考えることが重要なのです。

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Lukia

偉人の伝記には、成功のヒントがたくさんつまっているんですよ。

 

学年別のオススメも考えてみた。

読書感想文は、「対比」したことを踏まえて、徹底的に自己PRしろ!と書いたものの、
成長段階として、それがまだ難しい場合もあるかと思います。
そこで、小学校をざっくりと2つに分け、どんな本がよいか考えてみました。

小学1〜3年生

年齢的に、抽象的思考が難しい段階ですので、
説明文とか道中が楽しい冒険ものなどがよいかと思います。
タイトルに「〜のふしぎ(生物など)」とか「〜のぼうけん」などが含まれているものがオススメですね。

まずは、本を読むことが楽しいとか、知識を自分なりの言葉でアウトプットすることで、保護者や先生に褒められたり、友達にすごいと思われることが嬉しいなどの自己肯定感・自己効力感を高める体験をさせてください。

そして、この年代に読書をさせることの主なねらいは、「想像力を高めること」にあります。

想像力は知識や語彙をたくわえなければ高まらないのですが、逆に想像力が知識や語彙をたくわえるきっかけにもなります。突拍子もないことや、それは倫理的ではないという発想をすることもあるでしょうが、徐々に経験や知識が増え、論理的な思考ができるようになってくれば、子供が自ら修正していくので、あまり心配はいりません。それよりも、本の内容をテーマにして、あれこれおしゃべりを楽しんでみてください。
言葉は、使えば使うほど堪能になっていきます。どんどんアウトプットさせましょう。

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Lukia

大人相手にいっぱいおしゃべりしてくれる時間はそう長くはありませんからね。

小4〜6年生

抽象的思考が少しずつできるようになり、客観性を持ち始める段階になりますので、
心理的葛藤が描かれた物語がよいかと思います。
(現代の児童文学作品がよさそうですね)
大人の方は、「自分なら(どうする)?」という考えを広げ、深めるように。とだけ伝えてください。

小学校3年生ぐらいまでは、自他がまだまだ未分化な状態なのですが、
小学校4年生ぐらいからは、(どうも、自分と自分じゃない人がいる)とか、
(あれ?実は私って○○だ・・・)などと自己を客観視し始めたりします。

よくおしゃべりしていたような子でも、黙る時間が少しずつ増えたりするようになりますので、
無理におしゃべりさせようとはせず、内省デビューを温かく見守ってあげてください。

医療者を目指す高校生へ

高校2年生の現代文で、中島敦の『山月記』を読むと思います。
この『山月記』を読んで読書感想文を書くなら、
ほとんどの人が主人公の李徴 ( りちょう )の来し方について書くと思います。
(私も高校生の時ならそうすると思います)

しかし、医療者を目指す人、
袁さん(えんさん)と自己を対比してみてください。
袁さん(えんさん)は、李徴 ( りちょう )の独白を傾聴していますが、
この傾聴の姿勢は、医療者(特に臨床の)に欠かせないものではないかと思います。

また、別れ際、李徴 ( りちょう )は袁さん(えんさん)にお願いをしていますが、
これをどうやって叶えるべきでしょうか。あなたが医療者となったとき、李徴 ( りちょう )の願いをどう叶えますか?

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Lukia

このテーマにチャレンジしてくださる方、メールなどでお送りください。
誠心誠意読ませていただき、御希望があれば添削もいたします。

名作・大作は読書感想文向きか?

保護者や先生が子供の頃からあるような、読みつがれてきた名作や、
ハリー・ポッターのように、一冊が分厚く何巻もあるようなシリーズものの大作は読書感想文向きか。というと、
私は、そうとはいえないと考えています。

単に読むだけならば、名作・大作こそ読むべきです。
名作・大作は、時代の変化をものともしない力強さがあり、長らく読みつがれてきた理由や価値があります。

しかし、読書感想文を書くには、名作・大作であるがゆえにコスパが悪いのです。
何百ページと読んでも、書くのは1200字程度。
クライマックスもたくさん含まれていて、どのシーンに基づいて書くか選択疲れを起こしてしまいます。

はたまた、長らく読みつがれてきた名作の場合、
作者の生きた時代の子供像と、社会情勢などが現代のそれらと違いすぎることも多いです。
そのため、子供の成長段階によっては、大人の補足ガイドなしに一人で読めないおそれもあるのです。

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Lukia

ただでさえ忙しい夏休み中です。自力で読める本を選ばせておくのがベストです。
夕飯の準備どきになって、「おか〜さ〜ん、これってど〜ゆ〜こと〜?」ってたんびに呼ばれるのは勘弁願いたいですからね。

時代のギャップは世代間ギャップそのものなので、登場人物の心理に共感することが難しい場合もあります。

「対比」は、「二つの近いもの、似通ったものを比べる」ことです。
ギャップがありすぎたら、対比どころではありません。

2時間程度で読めるような短めの作品を読み、じっくり「対比」して、自己PRをする。
これが読書感想文に求められることですので、
課題図書になっていない限りは、名作・大作は選ばないようにしましょう。

保護者の方へ

ここまで、どの年齢・年代に向けてのメッセージなのか、わかりにくい文章になってしまいましたが、
かつて読書感想文がいやでいやで仕方なかった(?)保護者の方へのお願いも書いておきたいと思います。

読書感想文の成否は、本選びである程度決まります。

読書感想文は、実は自己PRの文章だ!と繰り返してきましたので、

本を読んだことをPRするのは、「『(タイトル)』を読みました。」ぐらいにとどめ、
あとは、ひたすら自分のことを書くのでも全く問題はないはずです。

しかし、何のベースもなく、1200字も自分のことを書くのは、キツイ。
ですから、本の内容の助けも必要になろうかとは思います。
自分のことを書くためのベースになるものですから、どんな本でもいい。というわけではないんですよね。

これからの世代には、これまで以上に、論理的な表現力が求められますので、
文章を書く練習をきらいにならない配慮が必要になります。

ここまでに、どんな本を選んだらいいか。という私なりの考えを示してきました。
子供に本選びを任せてしまうと、読書感想文を書くには不向きな本を選んでしまうおそれもあります。
そこで、もし、保護者の方が本屋さんや図書館などに同行なさる場合であれば、
ちょこっと巻末を読んで、ハッピーエンドか、準ハッピーエンド(悲しみもあるが、前向きな結末)になるかどうかを判断されるのもよいかと思います。

小学校の高学年以上であれば、生死だとか、戦争と平和などというちょっと重めのテーマにチャレンジするのもよいと思いますが、自身の将来なども含めた前向きな自己PRをすることが主目的なので、
成長段階や本人の性格なども含めて判断するようにしてください。

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プロフィール

Author Profile
Lukia_74

元・再受験生、元塾講師、元高校非常勤講師。広島育ち。
中・高国語の教員免許を取得するも、塾講師時代は英語や数学ばかり教えていた。
思うところあって大学再受験を決意。理転し、数学Ⅲ、化学、生物を独習する。国立大学へ合格するも、2018年3月に再受験生生活にピリオドを打つ。
モットーは「自分の予定はキャンセルできても、生徒の予定はキャンセルできない」と「主婦(夫)こそ理系たれ」。
広島のお好み焼きとグレープフルーツが大好き。どっちかというと左党。楽しみはひとりカラオケ。
高校で教鞭を取った経験から、現在は「現代文」と「小論文」の指導力アップを目指し、自己研鑽中。最近は趣味として高校数学を解く。

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Posted by Lukia_74