正確な語義理解がリテラシーの第一歩。【高校非常勤講師奮闘記】
カバーボックスで明らかになる人気の理由
塾講師時代、中学受験をする小学6年の生徒たちに人気だったのが、『三省堂 例解新国語辞典』でした。
(私は2020年に9版を買ったのですが、2022年現在は、10版が出ているようです)
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彼らから絶大な人気を得ていたことを受けて、
肌感覚として、いい国語辞典だという印象を持っていたのですが、
改めて辞典が収まっているカバーボックスを読むと、かなり工夫が凝らされていることがわかりました。
必要な語彙の飛躍的な増加に備えるための、中学生向け辞典のゆるぎなきトップセラー
- 唯一の教科書密着型辞典。最新の各科教科書から採録した語句のほか、新語・新語義など一千項目分を増補し、類書中最多の五万九千語を収録。
- 適切な言葉遣いのために、【注意】欄で意味の誤解・誤用に注意を喚起。
- 敬語を身につけるために【敬語】欄で尊敬語と謙譲語を丁寧に説明。
- 共通語と同じ姿をした意外な”気づかない方言”を【方言】欄で理解。
- 圧倒的な情報量。和製英語は本来の英語との違いを独自に説明。群を抜く用例・類義語・対義語と【表現】、【参考】、【表記】欄で国語力が伸長。
- 【「異字同訓」の漢字の使い分け例】、新【常用漢字表】、【敬語の指針】など最新の国語施策に準拠し、中学受験から高校受験までの学習を強力に支援。
教科書密着型で、しかも各教科とありますから、
学校生活で生じる意味の問題は、国語だけにとどまらず、
数学や理科、社会などでも対応できるということになります。
そりゃ〜情報量が多いのもうなずけますね。
また、版を重ねるごとに、見やすい・読みやすい工夫もなされています。
昔は、黒一色だったように思うのですが、最近は朱赤と黒の二色刷りになっています。
高校生の語彙力を高く見積もるな
個人差があることが前提ですが、こどもの語彙力を高く見積もるべきではありません。
むしろ、低く見積もったぐらいがちょうどいいと思います。
本を読まない(なんなら漫画さえ読まない子もいます)、大人と話をしない。
手紙というまどろっこしい方法で、気持ちを伝えることはなくなりましたし、
親の目や時間を気にしなくても、自分のタイミングで、相手とコンタクトを取れるようになりました。
言葉を尽くさずとも、一文字やあらかじめ言葉が含まれた画像で自分の状況を伝えることも可能になりました。
重視するのは瞬間的な感情や状況の共有で、そんなあっという間に過ぎるものについて、言葉を尽くしたり立ち止まって分析する必要はないのでしょう。
しかし、教科や学力としての国語力は、実は日常生活の積み重ねで成り立っています。
日常で、いかに豊かな言語生活を送るかが、地頭レベルの「国語力」を鍛えていて、
その「国語力」が教科や学力の国語力を支えているのです。
人は、不便や不都合に出くわし、それらを試行錯誤しながら解決することで、
言葉を覚え、使い方を学んでいくのですが、
おそらく2000年以降に生まれた子どもたちは、それらの機会を得ぬまま大きくなっています。
学校によっては、そういう年齢相応の国語力を身につけないまま大きくなっている生徒が多い場合もあるでしょう。
私が現役高校生だったころにはうじゃうじゃいた、背伸びして先生たちとも対等に渡り合おうという子は見かけなくなりました。
私が担当したのは高校生でしたので、
私と出会うまでに10年前後の国語教育を受けていることになります。
彼らはその10年前後の国語教育をもとに現在の姿を形成しています。
同時に、「国語って、こういうもんだ」という認識もできあがっています。
ものすごく歯がゆいのですが、彼らの現在や国語教育に対する認識をよい方向へ覆すのは難しい。
(ほぼ不可能です)
当たり前ですが、たった半年弱しか付き合えない一教員の力ではどうにもできないことだらけでした。
とはいえ、これも一朝一夕で身につくようなものではありませんよね。
とにかく避けたいのは、(よくわからんけど、まぁいいや)と思わせること。
彼らの(よくわからん)の大もとは、語彙力の少なさにあります。
だからこそ、説明する語句の対象年齢を下げる必要があるのです。
言葉を知らなければ、事実は見えません。ただ目に映っているだけで、認識できないのです。
認識しなければ、その事実が発した理由や、それに関わる心情の機微も理解できません。
アインシュタインが、理論は、カフェのウェイトレスにも理解できるぐらい簡潔平易にしなきゃ意味がない。というようなことを言っていたように思いますが、まさにそのとおり。
国語科の教員は、言葉を尽くし、あれこれ表現を変えては試して、こどもたちの語彙力を高める責務があるのです。
『三省堂 例解新国語辞典』のカバーボックスには、「中学生向け」と書いてありましたが、
高校生でも十分です。(なんなら、大人でもいいと思います)
とにっかく、平易な言葉で正しい意味を理解させることが、リテラシーの第一歩。
大学入学共通テストもリテラシーが求められる問題形式になっていることですし、
国語科に携わる以上、ニュアンスでなんとなく伝える・伝わる昨今の風潮に最後まで抵抗したいものです。
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