優秀作品をひたすら愛でてみる(その4)【生き残れ!読書感想文は自己表現のサバイバルゲームだ!】
記事を音読してみました
2022年10月15日、記事を音読してみました。
一発録りした上、編集なしでアップロードしております。
ちょっとかんだり、読み直しをしている部分があります。(ご了承ください)
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前回に引き続き、第67回読書感想文全国コンクールの高等学校の部で、文部科学大臣賞を受賞した
富山県立富山中部高等学校2年 北林愛里咲さんの「世界を変えるために」を分析していきます。
(以下、北林さんとお呼びすることにいたします)
北林さんは、『わたしはマララ 教育のために立ち上がり、タリバンに撃たれた少女』 /学研パブリッシング/マララ・ユスフザイ(ハードカバー)を読み、読書感想文を書いています。
北林さん、ついに「芯」を得る。
前回は、みるみる変化していく北林さんと、本が若者に与える多大な影響を堪能したわけですが、
いよいよ今回が「優秀作品をひたすら愛でてみる」の最終回になろうかと思います。
受験勉強の過酷さ?に幼い頃から抱いてきた医師になるという志すらあやうくなっていた北林さんですが、
マララの半生が綴られた本を通じて、原点回帰を果たします。
本の力は本当に偉大だなぁと思います。
しかし、原点回帰を果たしただけでは足りません。
揺り戻しが必ず起こるからです。
(受験勉強は、ガッチガチの鋼のメンタルを要します)
時空も言葉も越えて、マララに叱咤激励された北林さんは、
その後の高校生活、いや人生を支える「芯」となる思いを得ます。
変えるべき世界から目を離さず、苦しむ人に寄り添い続ける
今の自分の頑張りは、誰のためなのかを確認したのです。
他者のためとか、身近な人、大切に思う人のためなら不思議と頑張れるものです。
高校二年生にしては「世界のために」とか「苦しむ人のために」とか壮大すぎると感じる方もあるかと思いますが、
逆に高校二年生だからこそ、このぐらい壮大な方がいいのかもしれません。
そして、彼女は、自分が恵まれた環境にあることを生かして、この壮大な目標を達成する努力をしていく。との決意表明をしています。
生活を脅かされることなく、学ぶ自由が保障されていることは、アドバンテージにほかなりません。
しかし、恵まれた環境にあるからといって、これを引け目に感じる必要もないのです。
アドバンテージを得ている人には、また別の使命やミッションが与えられているはずだからです。
苦しんでいる人に寄り添うには、寄り添う自分が力を蓄える必要があります。
弱いままでは、ともに苦界に陥るおそれがあるからです。
すぐには救えなくとも、その悔しさをバネに学び続け、力を蓄える。
現在の自分に課せられたことをひとつひとつ着実にこなすことで、苦しむ人の数は少しずつ減ると信じてほしいと思います。
引用の仕方がうますぎる!
北林さんの読書感想文を読み終えたとき、
うまい、うまいぜ、北林さん!
と、ちょっと悶絶してしまいました。(笑)
「今後の私の支えとなるだろう。」と前置きした上で、
マララの言葉を引用して締めくくっているのです。
普通は、今後の抱負などで締めくくるものなのに!
少し長めのマララの言葉を引用しているのですが、
ここまで来ると、もはや、マララと北林さんがダブってくるので、
マララの言葉であると同時に、北林さんの言葉のようにも思えてくるのです。
なんなら、私の頭の中には、次のようなイメージがわきました。
映画だったら、彼女の言葉だけがバーン!と映し出される。とか、
喧騒の中、マララ役の俳優さんがクローズアップされ、
彼女の姿がドアップになったところで、背後の喧騒が消える。
力強い瞳をしてたたずむ彼女と、彼女の声で言葉のナレーションが入る。
など。
こんな演出だったら、ぞわぞわしちゃう。
読書感想文を読んでいるのに、映画のエンディングを見ているような気分になってしまいました。
『ガ○スの仮面』のヒロインの演技を見て、目が真っ白になっちゃう登場人物の気持ちがよくわかります。(笑)
マララの言葉を支えにして、どんどんがんばってほしいものです。
読書感想文を読んで私が感じたこと
北林さんの読書感想文を読んで、なにしろ彼女の行く末が楽しみになりました。
17歳にして、変えるべき世界を見据えた彼女は、今後どうなっていくんだろう。とわくわくしましたし、
日本の子どもたちや、日本そのものもまだまだ捨てたもんじゃないな。とも思いました。
さらに、教育に携わる人間としては、こういう子どもが一人でも多く育つような日本にしていかなくちゃ。と引き締まった気持ちにもなりました。
この読書感想文は、単なる自己表現ではなく、
子どもを育てることに携わる大人を勇気づける文章であったと思います。
読書感想文は、「大人へのエール」と思え!
何のために読書感想文を書くのか、方針が見えない人に提案です。
「大人へのエール」と思って、自己表現をしてください。
大人にとって嬉しいことは、子の成長や変化です。
大人は、直接的な感謝の言葉も嬉しいのですが、
子の成長や変化を目の当たりにして、喜んだりやりがいを感じる生きものでもあるのです。
つまり、あなたの自己表現は、単なる自己表現ではありません。
大人に、これまでの努力が無駄ではなかったこと、
自分のはたらきかけが若い人たちに何かしら影響を与えていることを感じさせるご褒美でもあるのです。
「自分は何かしらを成しうる存在だ」と感じることを自己有能感といいますが、
大人は、できた〜!と喜ぶことが減ります。
子どもなら褒められることも、大人はできて当たり前になることが多いので、
褒めてくれる人も減ってしまいます。
(いくつになっても、褒められたいのが人間というものなんですけどね)
しかし、このような文章があれば、間接的に自己有能感を得ることができるのです。
自己表現を通じて、
大人たちに、「ありがとう。私は、こんなことができるようになったよ。」とか、
「これからも、子どもたちのためにがんばってね!」と伝えてみてください。
間接的な「大人へのエール」が、力強い国づくりの礎となるのです。
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